異邦人
                                                  アルベール・カミュ

 
5月から裁判員制度が始まります。我々も法廷で人を裁くことになります。
そのなかで、仮に被告が「太陽のせいで」人を殺したと証言したら、あなたならば
どのような反応を示すでしょうか。

 主人公ムルソーはひょんなことから殺人を犯します。殺人を「ひょんなこと」と書くのは
語弊があるかもしれません。けれども、ムルソーは確かに偶然あるいはたまたま殺人を
犯してしまうのです。ムルソーの友人たちは、刑を少しでも軽くしようと法廷で必死に
彼を弁護しますが、皮肉なことに彼らの口から述べられる事実は彼を不利にさせて
いきます。寡黙なムルソーですが、最後は司祭に対して思いを一気に吐き出します。

 ムルソーが犯罪者であることは間違いないのですが、あたかも彼はえん罪のような
書かれ方をしています。殺人者であるはずのムルソーに非はないと錯覚してしまう、
けれども、むろん、殺人は擁護できない。ムルソーと私は融合しそうになりながらも、
それに引き込まれまいと反駁する。本を読みながら、その駆け引きに始終振り回された
本でした。