平成11年9月にJCO東海事業所で起きた臨界事故の調査委員会からの報告書によると、一方を向上させようとすると、一方が犠牲となるという矛盾と二律背反が見えてきた。
◎安全性を向上させると効率が低下する。
◎規則を強化すると創意工夫がなくなる。
◎監視を強化すると士気が低下する。
◎マニュアル化すると自主性を失う。
◎フールプルーフは技能低下を招く。
◎責任をキーパーソンに集中すると、集団はばらばらとなる。
◎責任を厳密にすると事故隠しが起こる。
◎情報公開すると過度に保守的となる。
二律背反(にりつはいはん)とは、「ドイツ語でアンチノミー(Antinomie)と言い、二つの相矛盾する命題である定立とその反定立が等しい合理的根拠をもって主張されること。」
平成17年4月に656名の死傷者を出した兵庫県尼崎JR脱線事故では経済性を優先し、また責任を厳格にしために、ミスを取り戻そうとして新たに重大なミスを発生させてしまった。
競争の中で生き抜くためには、安全と効率はぎりぎりの線で運用しなければならないのかも知れない。
しかし、人の命を預かる、人の財産を預かる、人の情報を預かる組織や危険な物を取り扱う組織の経営層は、安全を最優先と考え効率を実現するためにはどうすればよいか、組織の円滑な運営のために矛盾と二律背反をどのように解消していくか常に考える必要がある。
さて、とても難しい話をしてしまったが、情報化の時代、過去の貴重な経験を生かし、再発を防ぐためにはどうすればよいのか、避けて通るわけにはいかない物があるとすれば何なのか、そのためのヒントになればと思う。
平成17年8月29日