久我・加園に係わるむかし話紹介
シリーズ第1話
河五郎渡土(kawagorouwatado) <石裂>
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いまから百数十年むかし、加蘇山神社の前を流れる荒井川のほとりに、河五郎という老人が住んでいた。
身よりもない河五郎は、晴れた日は山仕事に出かけ、雨の日は炭だわらなどをあんでくらしていた。
河五郎の住むあばら家の近くを川にそって、石裂から寄栗へ行く道がとおっていた。道といっても、
人がやっととおれるだけの山道で、大雨が降ればすぐにくずれ、そのたびに、村人は川岸をはうように行き来しなければならなかった。
だが、それ以上に困るのは、丸太を渡しただけの橋が流されてしまうことだった。
河五郎は、くずれた道をはうように行く人を見れば、
「わしについて来いよ。」
と、手をひいてやり、流れた橋のたもとで、戸惑う人がいると、
「わしに任せろ。」
と、肩に乗せて渡してやっていた。そして、ひまを見ては、丸太をくくり合わせて橋をつくり、くずれた道を直していた。
そんな河五郎に、村人たちは、
「じいさん、食べてくれや。」
と、とりたての野菜をとどけ、
「これ、使ってみろや。」
といって、こまごました物を置いていくようになった。
つづき
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