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河五郎渡土<石裂>

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 ある年の夏のこと、山仕事からの帰り道、河五郎ははげしい夕立に降りこめられてしまった。夕方のように暗くなった森に光るいなずま、山にこだまする雷、 山肌を滝のように流れ落ちる水、山の夕立には馴れている河五郎だったが、いきた心地もなく、岩かげに身を潜めていた。
 やがて、雨もあがり、岩かげを出て川岸にたどり着いた河五郎はおどろいた。うずをまいて流れる水は、向こう岸にある河五郎の家の土間にとどきそうだった。 しかも、水かさはなお、増えつづけている。このままでは、家は流されてしまう。橋はもちろん、なくなっている。
 河五郎は加蘇山神社に向かって、
 「神さま、どうぞ、川の流れをしずめてください。」
 と、心をこめて祈っているうちに、水はしだいにへりはじめ、日の暮れるまでに、川はいつもの流れに戻っていた。

つづき